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聖書研究会 「詩篇73編、74編」

巣鴨教会聖書研究会 詩編73編74編

2020年1月19日 渡辺善忠

 

 今月はまだ学んでいない73編と74編を学びます。

 

詩編73編

前書きに記されている「アサフ」は、エルサレム神殿の祭儀で歌う人々のグループ名です。アサフは神殿の祭儀を司るレビ族に属しており、研鑽を積んだ聖歌隊のような存在でした。このため前書きに「アサフ」と記されている73〜83編は、音楽の訓練を受けた人々によって歌われていたと考えられています。

 73編の前半には、神に逆らう人々が飽食に身が肥やし、安穏な暮らしで財をなしていくことへの批判がつづられています。旧約聖書には「富は神から授かった恵みである」という思想がしばしばみられるため、前半の御言葉には、神のことを顧みない富裕層の人々への批判が込められています。また「わが主よ〜彼らの偶像を侮られるのを」という御言葉には、神を顧みなかった富裕層の人々の中に、他の神々(偶像)を拝むようになった人々がいたことが示されています(20節)。

 このような状況に対して、前半の中ほどに記されている「わたしは心を清く保ち、手を洗って潔白を示したが」(13節)、「ついに、わたしは神の聖所を訪れ、彼らの行く末を見分けた」という御言葉には、古の詩人が忠実な信仰生活を歩んでいたことが示されています。1〜20節には、このような信仰者と不信仰者の対比が描かれているため、前半の原詩は日常的な不条理を歌った嘆きの詩であると考えられています。

 後半は前半の内容と異なり、詩人が神を求める素朴な思いが歌われているため、この部分は前半と別の原詩による可能性があります(21〜28節)。この可能性に基づくと、73編は、異なった二つの原詩が組み合わされ、神殿の祭儀に用いられるようになった時期に現在の形に至ったと考えられます。

 このような背景は、私たちにも身近な意味があります。なぜなら私たちも、日常の歩みの中で、貧富の格差や様々な不条理を経験するからです。また私たちは、内なる嘆きを神に訴えることもあるからです。この意味をおぼえて、「神に近くあることを幸いとし、主なる神に避けどころを置き、御業をことごとく語り伝える」者とされるように祈り合いながら、教会生活を歩み続けてまいりましょう(28節)。

 

詩編74編

 前書きに書かれている「マスキール」という御言葉は、ヘブライ語で「教訓」という意味です。「永遠の廃墟となったところ」、「敵は聖所のすべてに災いをもたらしました」、「至聖所の中でほえ猛り」、「彫り物の飾りをすべて打ち壊し」などの御言葉には、イスラエルの敵国がエルサレム神殿を破壊した時の様子が具体的に伝えられています(1〜8節)。このため74編の原詩は、新バビロニア帝国が紀元前587年にエルサレム神殿を制圧した史実を歌い伝える嘆きの詩であったと考えられています。このような背景は「今は預言者もいません」、「敵は永久にあなたの御名を侮るのでしょうか」(9〜10節)という御言葉にも示されています。なぜならエルサレム神殿が破壊された直後は、預言者たちは活動することが出来ず、新バビロニア帝国の人々がイスラエルの神を嘲笑していた様子は、他の詩編にも伝えられているからです。

 このような背景に対して、中ほどに書かれている「御力をもって海を分け」(13節)という御言葉には出エジプトのことが示されており、「太陽と光を放つ物を備えられました」(16節)という御言葉には天地創造の御業が示されています。また「地の境をことごとく定められました」(17節)という御言葉には、神がイスラエルの人々をパレスチナ地方に定住させて下さった古代の歴史が示されています。さらに「あなたの鳩の魂を獣に渡さないでください」という御言葉には、国を失ったイスラエルの人々の心が鳩のように小さくなったことと、「獣」のような新バビロニア帝国の人々がイスラエルの人々を虐げていた現実が示されています。このため古の詩人は、天地を創造された神が古代の信仰者たちを守り導いて下さった御業を思い起こすことによって、困難に直面していた人々に慰めを与えたと考えられています。

 74編が苦難に直面していた人々への慰めの歌であったことは、私たちにも大切な意味があります。なぜなら日本にも、古代の戦禍で迫害を受けた人々の古い民歌が残されているからです。また私たちも、嘆きの思いを心の中で奏でることがあるからです。この意味を心に留めて、「神よ、立ち上がり、御自分のために争ってください」という御言葉によって、人間の力による報復行為を慎むことの大切さを心に留めると共に、世界に真の平和が訪れるように祈り続けたいと思います。

author:sugamo-church, category:聖書研究, 21:18
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